赤いカブトムシ 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「赤いカブトムシ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これはもう完全に、小学校の3年生向けに書かれた、ひらがな中心の児童文学というか、子ども用の探偵小説なんですけれども、読んでみると面白かったです。
 
 
怪しい「黒マント」という男があらわれて、子どもたちがこれを、追いかけまくるんですけど……ハリウッドのテレビドラマみたいに、第1章のオチと次章の始まりが印象的なんですよ。2章の始まりがこうなんです。
 

森の中の、ふるいせいようかんのまどから、小さい女の子が、たすけをもとめてなきさけんでいた、そのあくる日のこと。
 
「たんてい七つどうぐ」とか「どこかに、かくし戸があるにちがいない。どこだろう。」とか「ちかしつへのおとしあな」とか「まっくらなほらあなのおく」とか「せいどうのまじん」とか……現代の最新ゲームでもしょっちゅう出てくるモチーフが描きだされていて、するすると読めました。
 
 
「まほうはかせ」と少年たちの闘いがおもしろかったです。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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死のなかの風景 原民喜

今日は原民喜の「死のなかの風景」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは「原爆小景」という詩集の作者原民喜が、戦後の1951年に発表した短編小説です。
 
 
原民喜の初期作品と後期の翻訳を見ていて、いちばん印象に残ったのは、氏はそもそも童話作家からスタートして、最後まで童話について考え続けていた、ということを知ったことです。原民喜はスウィフトの『ガリバー旅行記』のように優れた童話を、いつかみずから描きだして、子どもたちに読ませたかったのだ、と思いました。
 
 
「死のなかの風景」の作中に「彼は」という記述がいくつも出てきます。それから「映画会社」という言葉も。戦争中の人々の生を描きだしているんですが、童話作家として長年培ってきた三人称の物語描写と、日記や随筆とも通底している平易な文章とが入り混じった文体で、物語に引き込まれました。

 
この物語には、「彼」「妻」「母」「友」という記述がほとんどで、固有人名が書かれていないんです。誰からも語られなくなった、誰も思いだすことが出来ない死者について、原民喜が描こうとしたから……なのかもしれない、と思いました。
 
 
作中に描かれるブリューゲルの『死の勝利』という絵画については、野間宏が戦後すぐにこれを描きだしていました。終章も『暗い絵』と通底している物語構成でした。
 
 

 
 
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泡盛物語 佐藤垢石

今日は佐藤垢石の「泡盛物語」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
家族のために厳しい肉体労働をしている男の、実話を記していった物語なんですけど、あまりに貧乏で、かまどに火を入れるための薪さえろくに手に入れられず、実家に帰る金さえ無い。20世紀末では、知識のある人は裕福だったわけなんですけど、昭和初期には貧困を描きだす文筆家が居て、そういう人が「天知る、地知る、我知る、人知る」という後漢書の言葉を言ってみたりする。
 
 
母が危篤となったという電報が届いたのに、貧しさのために母の家に帰ることが出来ない。肉親へ詫びの手紙を送ると、友人からこういう手紙がとどいた。この手紙の前文が印象に残りました。
 

前略、御健勝の由慶賀に存じ候。さりながら自今御窮迫との御事、それしきの境遇苦慮するに足らずと、遠方より御声援申上げたく候。
 
友人は、仕事を用意したから、母や妹の暮らす街へ帰って来いと言うんです。
 
 

 
 
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交尾 梶井基次郎

今日は梶井基次郎の「交尾」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
梶井基次郎が好きなんですけど、この「交尾」というのがほんと良いんです。肺病の流行るさびれた街をゆく、悠然とした猫を、梶井基次郎が描写しています。もうストーリーなんてどうだっていいと思うくらい、その文体が美しいんです……。梶井基次郎は、街をゆく猫がじつに優雅であることを、こう記します。
 
 
  彼らはブールヴァールを歩く貴婦人のように悠々ゆうゆうと歩く。
 
 
それから、「巨大な工場地帯の裏地のような」とでも形容したくなるような「露路」に現れる小鳥たちの奇怪さをこう記します。
 
 
  隣の物干しの暗いすみでガサガサという音が聞こえる。セキセイだ。小鳥が流行はやった時分にはこの町では怪我人けがにんまで出した。「一体誰がはじめにそんなものを欲しいと云い出したんだ」と人びとが思う時分には、尾羽打ち枯らしたいろいろな鳥がすずめに混ってえさあさりに来た。もうそれも来なくなった。そして隣りの物干しの隅にはすすで黒くなった数匹のセキセイが生き残っているのである。
 
 

セキセイというのはとうぜんセキセイインコのことなんですが、あと河鹿というのはカジカガエルのことです。ルリは小鳥のことで、wikipediaに瑠璃色のオオルリの写真が載っています。(あるいはコルリかもしれません)
 
 
ところで地球上でもっともはじめに、原始的な歌を歌った生物は、田んぼによくいる、あのカエルかもしれない。世界最古の歌うたいは、じつはカエルだった! ……かもしれない。たしかに考えてみればそれで正解のような気がします。梶井基次郎はそのことをとても詩的に記しています。
 
 

 
 
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老ハイデルベルヒ 太宰治

今日は太宰治の「老ハイデルベルヒ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
題名の『アルトハイデルベルヒ』というのは、古き(良き)ハイデルベルクという意味で、これはドイツのマイアーフェルスターの演劇から引用したものです。古き良き都市ハイデルベルクになぞらえて、伊豆半島は三島の魅力を、太宰治は描きだしています。
 
 
学生時代に、太宰治は、友人佐吉さんのいる伊豆半島の三島が大好きになったわけで、その8年前の町と祭りと、貧しい人びとの様子を描いているのが、この『老ハイデルベルヒ』という作品です。
 
 
なんだか、バルザックの『ゴリオ爺さん』に描かれる、散財をしつくして一文無しになるラスティニャック青年のような、若き日の作家自身の姿を描きだす、太宰治なんです。太宰治はよく、過去の自身をモデルにして小説を書いています。若い太宰とすこし歳をとった太宰とが2人居る感じを描くのが、なんだか印象に残るんです。2人の太宰治が活写されている。
 
 
この『老ハイデルベルヒ』は、1940(昭和15)年3月に出されたもので、このころに『駆込み訴へ』や『走れメロス』などの名作を出しています。
 
 
作中に「八年間」と書いているので1932年ごろの三島を書いているはずなんですが、太宰治の正確な年表を調べてみるとこれは、1934(昭和9)年の25歳の夏の思い出を、描いています。略年譜には『夏、静岡県三島市の坂部武郎方に約一ヶ月滞在、「ロマネスク」を執筆。』と書いているので、この頃のことを今回書いていることは間違いないです。
 
 
太宰治にとって、三島はとても思い出深い町なんです。作中こう書いています。
 
 
  私のそれから八年間の創作は全部、三島の思想から教えられたものであると言っても過言でない程、三島は私に重大でありました。
 
 
太宰治はどこまで現実の模写をして、どこから先が小説の幻想なのか判らないような書き方をするんですけど、1934年と1940年との落差を描いている……というようにも読める。太宰は何よりも、佐吉さんという人が好きで、その明るい生き方を活写しているわけで、それが1940年の三島にはもう居ない。佐吉さんとの思い出が、この物語に活写されている。太宰治はこの小説の序文で「人間は誰しも、思ひ出のハイデルベルヒを持つてゐる。」と書き記しています。
 
 
祭りの日を描きだした場面が印象深いです。本文こうです。
 
 
  お祭の当日は朝からよく晴れていて私が顔を洗いに井戸端へ出たら、佐吉さんの妹さんは頭の手拭いを取って、おめでとうございます、と私に挨拶いたしました。ああ、おめでとう、と私も不自然でなくお祝いの言葉を返す事が出来ました。
 
 
ここから10数行の描写がじつに美しかったです。
 
 

 
 
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人生案内 坂口安吾

今日は坂口安吾の「人生案内」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
西洋では文学の中心は「詩」にあって、それはもう古来から現代まで通底してそうであって、海外では詩で哲学をやる。詩のみで構成した演劇をやる。ミュージシャンが文学者だと認識されるのは日本では「えっ?」と思ってしまうが、世界文学ではどうも当然の事態で、それは文学と言えば詩だから、歌詞も当然文学として受け入れられる。ぼくはいまでも、ボブディランがノーベル文学者だと位置づけられたことに「えっ?」と驚くんですけど、それだけ西洋では詩が中心になっているってことなんだろうなと、最近思いました。ノーベル文学賞第一回受賞者はフランスの詩人です。そしてアジア初のノーベル文学賞受賞者はインドのラビンドラナート・タゴールという詩人ですよ。詩人が中心に居る感じがします。ゲーテのファウストは、詩の言葉だけを使って全文が記されている……。
 
 
日本では源氏物語や漱石の始めた文学が、みんな小説で、小説が愛されているのが日本で、だから近代文学と言えば小説の妙手である芥川龍之介や太宰治が愛読され続けている。日本には「かの有名な、詩人で哲学者の……」という人物があんまり居ない。哲学者の随筆がある、というのが基本のように思います。
 
 
ディープな読者が多いのに、一般的にはそれほど読まれないのが坂口安吾で、安吾は随筆や評論がすごい。それと較べると小説はそうでもないのかなと思ってこれを読んだら、やっぱりめちゃめちゃ面白いです。はじめの数ページが低調なことがある、気がするんです。後半になってエンジンがかかってきてぐーっと引き込まれる。
 
 
坂口安吾は貧しいところを堂々と書くのが、現代文学者とかなり違うところなんでないかと思いました。しかもわびしい貧しさじゃ無くて、暑苦しいような貧しさを描く。凍えるような貧しさを書くんでなしに、熱のある貧困を描くんです。それで引き込まれます。
 
 
困苦を描いた投書をすることに夢中になった男が居て、ところがだんだん、事実を記載するはずの新聞の投書欄に、筆が乗りすぎて嘘八百の悩みを書いて掲載してもらうのが趣味になってしまった。男なのに女になりきって、ありもしない悩みを訴える、というのを繰り返すようになって、これにのめり込んでしまった男。
 
 
ところが機械化の波にさらわれて、本業の手延べラーメンの麺打ちが、機械式の大量生産された麺に取って代わられてしまって、仕事を辞めざるを得なくなった。出稼ぎの低賃金労働者みたいになってしまって、金が稼げず、肝心の趣味の新聞を買うことさえ出来なくなった。それでやむなく、男は家にこもって子育てをして、女がオシャレな店で働くことになった。
 
 
男はもはや、新聞への投書だけが生きがいになってしまった。あつい涙が滴るような、嘘の悩みならいくらでも書けるのに、ホントの悩みはまるでネタにならないや、と男は思う。後半はめくるめく笑いの渦が押しよせてくるんです。これ、たぶん演劇の原作とかになったんだろうなと思いました。今の時代もぜったいにこう、投稿にだけ夢中になっている男って居ると思うんです。ツイッターとかブログとか。
 
 
妻はついに、金も稼がず趣味だけやってる男を見限って、良い男を見つけてしまった。だんなはこれにやっと気がついて、急にタタミから起きあがって妻を問いつめる。女はまるで働こうとしなくなった男を、正論でぶった切るんです。本文こうです。
 
 
「ヤイ、間男しやがったな。亭主の顔に泥をぬるとは何事だ」
「泥がぬれたらぬたくッてやりたいよ。どれぐらい人助けになるか分りゃしない。お前の顔を見ると胸騒ぎがしたり虫がおきるという人がたくさんいるんだよ。私はね、広い世間へでてみて、お前のようなバカな男がこの世に二人といないことが分ったんだよ。私は今までだまされていたんだ。畜生め! 人間のフリをしやがって。お前なんか人間じゃアねえや。雑種の犬か青大将とつきあって義理立てしてもらえやいいんだ。出来そこないのズクニューめ。他のオタマジャクシだってオカへあがってジャンパーを着るとお前より立派に見えらア。間男なんて聞いた風なことを云うない。人間のフリをするない。さッさと正体現してドブの中へもぐってしまえ」
 
 
ここから先がすごいボケとツッコミなんです。ぼくが今まで読んだ青空文庫の近代文学の中でいちばんユーモアがきいた物語だと思いました。みごとな下町の落語という感じがしました。オチも良いんですよ。ホントの悩みにぶち当たったらもう、言葉も無い。声に出して相談なんてしてられない。ましてや文章にするのはむつかしすぎる。新聞の人生案内は、あくまでも仮想空間として成立している。男はこうつぶやきます。
 
 
「人生案内てえものがニセモノに限るように、人生も人間てえものもいいカゲンの方がいいのかも知れねえな。」
 
 

 
 
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選挙殺人事件 坂口安吾

今日は坂口安吾の「選挙殺人事件」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
選挙が始まったので、なにか選挙に関係した本を読んでみたいと思って、これを見つけました。坂口安吾と言えば迫力に満ちた随筆が有名で、ぼくは「風と光と二十の私と」や、「ピエロ伝道者」がとても好きなんですけど、今回は小説作品です。
 
 
戦後のどさくさに紛れた事件を追っているんですけど、とにかくなんだか下劣なスジがあるんです。坂口安吾はアルコールでヘベレケになりながら作品を書いたことがあるそうなんですが、今回の小説がまさにこれなんではないかと思うんです。実際には判らないんですけど。どうしてこんなひどいことを書くんだろうと思っていたら、後半になって、坂口安吾の魅力がわーっと出てくる。戦中戦後の闇に塗れた世界の、その泥かきをする坂口安吾。途中で文学論も記されていて、古典文学が優れていて貴ばれているのに対して、透谷・芥川・太宰という近代文学の行き詰まりが、この物語に覆い被さるように語られるんです。
 
 
戦中戦後の餓死が深刻だった時代にも、透谷・芥川・太宰が繰り返し読まれたんだなあと思いました。登場人物の奇妙な男が、刑法で裁かれる犯罪をしたことが明らかになるわけなんですが、後半がなんか良いんですよ。
 
 

 
 
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