ともしい日の記念 片山廣子

今日は片山廣子の「ともしい日の記念」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
戦後すぐの、飯の話しを書いているんですけど、すごい美味そうで驚くんです。飢餓がもっとも激しかった時代から、やっと飯がたくさん食える状態へと回復しつつある時代の、ごはんのことを描写していて、迫力がありました。片山廣子は、貧しかったころの献立について詳細に書いているんです。作中に、葱を醤油づけにした食事が出て来るんですけど、読んでるだけでお腹が減りました。
 
 
この頃の食糧事情をちょっと調べていたら、戦死者230万人のうち、130万人を越える過半数はどうも餓死だったという学説があって、新聞社もこれを肯定的に書いていました。これは終戦後にも深刻な問題で、新聞社では1939年という太平洋戦争開始時と比べて、日増しに食糧不足となって、子どもたちの身長と体重と運動能力が落ちてゆき、戦後3年の1948年でさえ悪化し続けていた、という記録がありました。詳しくは「数字は証言する データで見る太平洋戦争 第4回」という記事をご覧ください。
 
 
やっとよい暮らしが出来るようになってきた一方で、戦争孤児たちが餓死してゆく現実があって、この二律背反の状況で、片山廣子が戦時中の美味しいごはんとお菓子の記憶を、描いているのが、とても印象に残りました。作中にこう書いていました。
 
 
  ピーナツ、乾柿、梅干砂糖漬、黒砂糖のあめ。こんな物はどこともなく遠くの方からそうつと運ばれた物。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
http://akarinohon.com/letters/tomoshiihino_kinen.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
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痴人の愛(17〜18) 谷崎潤一郎

今日は谷崎潤一郎の「痴人の愛」その(17〜18)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
痴人の愛は、1924年(大正13年)ごろに発表された作品なんですけど、今回とくに封建的な思潮と、谷崎潤一郎の先進的な思考がぶつかり合って、古いような新しいような、じつに不思議な章になっていました。谷崎は、若い妻の数々の不倫の顛末について描いているんですけど、純情で無くなった妻に対して抱く譲治という男の心理を詳らかに描いているんです。ナボコフのロリータが描かれたのが、「痴人の愛」のちょうど30年後の1955年です。時代と比較すると谷崎は圧倒的にアバンギャルドだったように思います。
 
 
江戸時代には趣味的な物語作品があまたにあったそうなんですが、谷崎の時代に、ほかにこれほど蠱惑的で趣味の色濃い物語を描いた人が居たんだろうか……と思いました。夫婦間の不和について描くときでさえも、甘美な描写が冴えるんです。ちょっと前後の文3ページくらい読まないと、文体が見えないんですが、本文こうです。
 
 
  …………私はいつも彼女に負けました。私が負けたと云うよりは、私の中にある獣性が彼女に征服されました。事実を云えば私は彼女をまだまだ信じる気にはなれない、にもかかわらず私の獣性は盲目的に彼女に降伏することをい、べてを捨てて妥協するようにさせてしまいます。
 
  
恋人同士の夫婦から、家族としての夫婦へと変化してゆくシーンが描かれてゆきます。
 
 

 
 
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ハイネ詩集(31)

今日は生田春月訳の「ハインリヒ・ハイネ詩集」その31を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
暗い詩が幾つかつづく中で、ライン川を描いた詩がなんだか明るいんです。
 
 
琵琶はかき鳴らされる子供はうたふ
驚くばかりのおもしろさ!
空はますます青くなり
心はひろがつて行くやうだ
 
山やお城も森も野も
お伽噺のやうに過ぎて行く——
さうしてそれらが皆見える
美しい女の輝く眼のなかに
 
 

 
 
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http://akarinohon.com/letters/heine31.html
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秋風記 太宰治

今日は太宰治の「秋風記」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
太宰治が、生田長江の詩を引用しています。
 
 
『ゲーテ詩集』や『ハイネ詩集』などを翻訳した生田春月の、お師匠さんが生田長江なんですが、2人とも近代文学の翻訳者であり詩人だったんですけど、太宰治もこの長江の仕事には興味を持っていたようなんです。
 
 
えーと、これが書かれたのは1939年(昭和14年)の29歳ごろのことです。戦争が徐々に拡大してゆくころに、太宰治は、息苦しい小説を書いている。第二次大戦中にリアルタイムで、日本の戦争のことを書けて、戦後も世界中で読まれた作家は太宰治ただ一人なんです。作中に、身罷ることを思いとどまった女性Kを描写した場面があるんですが、本文の……
 
 
  Kは、それを知っている。
 
 
という一文が印象深かったです。文学に用いられる『K』は、カフカの主人公『K』が有名だと思うんですけど、漱石も『こころ』でKを用いています。漱石の本名である金之助の『K』……という1文字を、漱石自身も、イギリス時代からときおり使っていたんです。
 
 
太宰治はそういう同時代文学をたぶん知っていて、女性にKと名づけたように思いました。今作はなぜか濁点が多いのが特徴で、なんとも言えず文そのものが美しいんです。ほんの一部分をランダムに抜き出しても、なんだか雰囲気があります。
 
 
「ほのかなよろこび」
 
「僕には、花一輪をさえ、ほどよく愛することができません。」
 
「ゆきあたりばったりの万人を、ことごとく愛しているということは、誰をも、愛していないということだ。」
 
「過去も、明日も、語るまい。ただ、このひとときを、情にみちたひとときを、と沈黙のうちに固く誓約して、私も、Kも旅に出た。」
 
「日に日に快方に向っている。」
 
……つづきは本文をご覧ください。
 
 

 
 
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痴人の愛(15〜16) 谷崎潤一郎

今日は谷崎潤一郎の「痴人の愛」その(15〜16)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
鎌倉の海辺の家を借りて、長期旅行のような引越のような、奇妙な転居を行った譲治とナオミなんですけど、そこに悪そうな奴らも一緒に遊びに来るようになった。譲治は鎌倉から東京の仕事場へ電車で通うようになった。
 
 
この小説は、きほん男女2人の物語なんですけど、たまに描写される一人きりのシーンが印象的で、映画と一人旅のちょうど中間のような、不思議な気配があって良いんです。こんなのです。
 
 
  夏の日盛りの暑いさなかを一日会社で働いて、それから再び汽車に揺られて帰って来る身には、この海岸の夜の空気は何とも云えず柔かな、すがすがしい肌触りを覚えさせます。それは今夜に限ったことではありませんが、その晩はまた、日の暮れ方にさっと一遍、夕立があった後だったので、濡れた草葉や、露のしたたる松の枝から、しずかに上る水蒸気にも、こっそり忍び寄るようなしめやかな香が感ぜられました。
 
 
ある日、譲治は会社の仕事がいつもより早く終わって、別荘のような家に帰ってみると、妙なことに妻のナオミが居ない。
 
 
調べてみるとどうも、妻のナオミと熊谷が2人きりで、夫をほうっておいてデートしていたようである。しかも、新しい住み家はなぜか、その熊谷の隠れ家がある町のすぐ側だったという事実を知って、譲治は愕然とし隠れ家となっている別荘街にかけつけた。その夜の海辺ではナオミのはしゃいだ声と、夫・譲治のマゾヒズム性を笑いものにする声が聞こえてくるので、ありました……。
 
 
文中の、差別問題に関わる古い言葉に関して、wikipediaには、いろいろ書いていました。こちらをご覧ください。それからNHKのEテレでやっていた、黒人差別問題を取材した番組をだいぶ前に家で録画しておいたやつを見たんですけど、『キミの心の“ブラック・ピーター”』と、Googleで検索すると、いま現在も、その詳細が分かるようです。
 
 
物語はじつに奇妙な展開をしつづけ、自分たち2人だけだと思い込んでいた2つの住み家に、浜田、熊谷という、おかしな人物がつぎつぎに入りこんでくる。ナオミは10歳以上年上の夫に隠れて、いろんな密会現場を作っていて、3人の男と代わる代わる遊んでいたようなんですが、そのナオミの奔放な、なんと言うんでしょうか裏切りに、読んでいて魅了されました。
 
 

 
 
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ハイネ詩集(30)

今日は生田春月訳の「ハインリヒ・ハイネ詩集」その30を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
作中に記されているフウケエというのは、おそらく『ウンディーネ』という作品を書いた、ドイツの詩人のフリードリヒ・フーケのことだと思います。たぶん。
 
 
作中の、哲学者ヘーゲルと悪魔の関係性はまったく不明ですが、ヘーゲル思想とナチスは明らかに対立していたようです。悪魔からほどとおいヘーゲルを愛読する悪魔というのは、なんともユーモラスだ、と思います。
 
 
 人間よ、悪魔を嘲るな
 人生といふものは短いからね
 そして永遠の地獄の苛責といふものは
 いゝ加減な迷信ぢやないからね
 
 

 
 
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僕の読書法 織田作之助

今日は織田作之助の「僕の読書法」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ぼくは随筆が好きなんですけど、この織田作之助の読書法のエッセーがおもしろかったです。方法論と言うよりも、「ぼくは眼が良い」んだ、というようなただの自慢とか、鴎外や芥川といった歴史的作家がやっていた読書法のことを書いています。
 
 
ぼくが体験的に知った読書法は2つくらいあって、難読書はむしろ、気になったところをノートにメモしつつ読みすすめたほうが挫折しにくい、ということと、図書館の返却期限のように、読書の締め切り日があったほうが読み終えやすいということです。
 
 
織田作之助は、楽な姿勢で読書するというんですけど、それだと自分の場合はぜったいに寝落ちしてしまうし、人によってぜんぜん方法が違うんだなと思いました。日本でいちばん数多く映画を作った監督も、畳に寝そべって楽な姿勢で脚本を書くのがだいじなんだと随筆に書いていたので、なにかそういうリラックスしつつむつかしいことをする人が居るようです。
 
 
本文に、正宗白鳥の随筆は「繰りかえし読」んでもそのたびに「たのしい」と書いていて、こんどこの作家の本を読んでみたいと思いました。
 
 

 
 
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