愛と美について 太宰治

今日は太宰治の「愛と美について」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
太宰治は小説の他にも、随筆っぽい短編を書くことが多かったみたいです。これはほんの数十頁ほどのものなんですが、「女生徒」という作品が発表されたすぐあとの、1939年(昭和14年)の5月20日に発行されたものです。1939年というのはどうも特別な年のようで、wikipediaの年表はこうなっています。年表みてるだけでも、激動の時代に思えます。ノモンハンで戦争が起きて、ナチスドイツがポーランドに侵攻して、マンハッタン計画がはじまっている年です。なんとも気になるニュースが多いんです。
 
 
1939年9月13日大日本航空がニューヨーク・横浜間の飛行に成功、とか。
1939年11月16日にはアル・カポネがアルカトラズ刑務所から釈放されたりしている。
 
 
その年に、太宰治がどういうものを書いていたのかというのが、興味深かったです。兄弟のことを、はばかりなく大胆に記しているのが、すごい迫力なんです。じっさいの家族構成は、このサイトに詳しく書いてあったんですけど、さらにいくつか太宰治の家族構成を調べていたら、とても多産な家系で、それから100年以上前と今とでもっとも異なるのは、長寿かどうかなんだと、思いました。
 
 
あと、年代をよくよく調べてみると、作中に「……世界大戦の終りごろ、一九二〇年ごろから今日まで、約十年の間に……」という発言があるので、太宰治は、1929年(昭和4年)かその翌年ごろのことを書いているようでした。10年前に書いた原稿を手直しして、出版社にだしたのか、あるいは10年前を思いだして書いたのかもしれないな、と思いました。
 
 
太宰は一人で小説家になったのではなくて、姉弟でよりあつまって、みんなでそれぞれ本を読んだり、評論を書いたり、詩作をしたり、小説を書いてみたりしていたようです。どこまでが事実なのかは不明ですが、ゲーテだけを愛している兄が居たり、数学や探偵小説が好きな弟が居たり、読んでいておもしろい文学論にもなっていました。あと文部省とか、政治の話とか、じっさいに太宰の父や兄弟にはそういう高等な大学教育を受けて議員になってという家族が居るわけで、事実が、太宰治の創作にいろんな影響を与えているのが感じられました。
 
 
姉弟で、即興で、口伝の物語創作をやっているというのが、ああーすごい家だなあ、と思いました。なんていうんでしょうか事実を正直に書くだけでは、無粋になってしまったり配慮が足りなくなってしまったりするわけで、そこに想像とか架空の設定が必要になる…。作家はどのように、事実以上の空想をのせるのか。その事実から空想への飛躍っていったいどうすれば上手くゆくんだろうと、作者に聞いてみたいなあ、と思いました。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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門(3) 夏目漱石

今日は夏目漱石の『門』その3を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
哲学者で詩人のシモーヌヴェイユが、「この世界は、閉じられた門である。それは、障害物である。が、同時に、通り道でもある」と言ったらしいんですけど、どういう文脈で言ったのか、原典をぼくは見つけられなかったのでようわからんのですが、この漱石の「門」という小説は謎の多い小説で、題名を漱石本人がつけなかった、そうなんです。森田草平という漱石の弟子が頼まれて、小宮豊隆と一緒に悩んで、さいごランダム抽出まで用いて、題名を決めたそうです。
 
 
穏やかな時の流れる物語を展開させながら、書き手本人は、題名を決める間さえ無いほど忙しくしつつ、こんな豊かな物語を紡いでいった、というのが衝撃です。しかし、考えてみれば、漱石は題名にこだわらない人だな、と思います。「三四郎」なんて名前ですし。「それから」も凝った題名じゃ無い。
 
 
今回の宗助は、やはり作者の漱石にそっくりな気がします。なにせ時間が無い男なんです。平日はもうすべて仕事の時間になっている。たまにできた休みは、やりたいことがありすぎて、かえってなにもできずにじっと暮らしてまた仕事だけの日々になってしまう。
 
 
のどかな休日を描いた物語なんですが、作中に、伊藤博文暗殺された記事が登場します。それにたいする、登場人物たちのじつに平凡で、リアリティーのある、緩い反応というのが……、これぞ文学という感じがしました。他人ごとというわけでも無いんですけど、嘘や大げさという感じがまったくしない反応なんですよ。激動の時代に対して、人々の平凡すぎる日常というのが浮かびあがってきて、なんだかすごいんです。
 
 
ほんとにこう、なんで漱石は未来のことが判っちゃうんだよ、とうなり声をあげちゃったんですけど、漱石は旧満洲は物騒なところで、「何だか危険なような心持ちがしてならない」と言うんです。じっさい1909年から1945年まで、どんどんおそろしい状態になってゆくわけで、1910年に朝日新聞で漱石はこういうもんを書いて出せたんだなあ……。と驚きました。当時、検閲や出版差し止めはしょっちゅう起きていたわけなんですけど。この頃の発禁書は、こうなっています。
 
 
■ かつて発禁となった作品
 
1905年  島崎藤村「旧主人」
1909年 永井荷風「ふらんす物語」「祝杯」「歓楽」
1909年 森鴎外「魔睡」「ヰタ・セクスアリス」
1909年 トルストイ「人間生活」
 
 
名作といわれるものほぼ全部みたいな状態ですよ。この10年後くらいに「かわいい女子と寝て暮らそう」みたいな歌詞の歌がわいせつだ、と言われて発禁になっちゃったそうです。「かわいい女子と寝て暮らす」ってべつに普通じゃないかと思うんですけど。すっごい時代に、漱石はすっごいものを書いたんだなあーと、どうもまだこの100年前の世間がはっきりと見えてこないぼくには不思議な感じがしました。
 
 
宗助は、子どものおもちゃを何とはなしに買って帰って、意味なくちょっと遊んでみる。清おばあさんに笑われて、「これでも昔は子どもがあった」と宗助は、過去の事実をぽっと言っています。宗助夫婦には今こどもが居ないわけなんですが、どうもかつて宗助夫婦には子どもが生まれたらしい……。だが今いない。
 
 
小六が、旧満洲は危険だとか、旧満洲に行ってみたいとか言うのを読んでいて、漱石はたぶん、日清戦争を取材に行った子規のことを思い出して書いているんだろうなあと、思いました。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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